不安な要素1

排泄介助の不安

においなどに耐えらえるか
介護の仕事をはじめて選ぼうとしている人にとって、一番の不安はオムツ交換、排泄関係ではないでしょうか。これは私が介護の仕事を選ぼうとしてるときに一番の不安だったことであり、一緒に資格を取るために勉強していた人たちにとっても、ダントツで一番の不安となっていました。においに耐えられるか…素手でやるのかな…手や服についたらどうしよう…などなどです。

まず、オムツ交換をはじめ、排泄の介助が耐えられなくて辞めていった人は、私の知るかぎりいませんでした。においにも、見た目にも、慣れます。これがいいことなのか悪いことなのかは意見の分かれるところですが、実際割とすぐに慣れてしまいます。 もちろん最初は結構苦しみます。はじめて間近にみる他人の排泄物は、においも見た目も相当なものです。ですが、利用者にはそういった感情を悟られてはいけないと教えられるので、思い切り顔をそむけたいところを、平静を装ってオムツ交換しなければなりません。いつもと色が違っていたり、量やにおいに変わったことがあれば看護師なりに報告しなければならないので、観察も必要になってきます。そして、それを一日に何度もすることになります。繰り返すうち、自然と適応してしまうようです。

蛇足になりますが、なぜ慣れるのがよくないという意見があるのか。これは、慣れること自体が悪いのではなく、慣れからくる配慮不足などを心配してのことです。例えば、部屋に便臭がこもっていても換気をしようとしなかったり、利用者が便失禁していても「あー、〇〇さん漏らしてるわ」くらいにしか思わなくなってしまう。また、排泄介助の際には、使い捨ての手袋を使用しますが、慣れてくると着けずににやってしまう職員もいます。手袋を着けずに、または交換せずに排泄介助などをつづければ、感染症のリスクがありますし、尿や便がついたかもしれない手で介助されるのは、利用者も嫌なはずです。まだ介護の仕事をしたことがない人は、今この段階では絶対に手袋を着けてオムツ交換をしたいと思っているはずです。それが普通です。ですが、慣れによって普通ではなくなってしまうことがあるんです。
うまくできるか
子供のオムツ交換と違い、足をひょいっと持ち上げてというわけにはいきません。中には100kg級の利用者もいます。量が子供とは違いますし、下剤を服用している利用者もいますので、便が泥状だったり水様だったりすることも多いです。漏れてしまっていれば、シーツ交換も発生します。認知症の利用者だと、協力をしてくれないのは良いほうで、妨害してくることも多いです。素早く綺麗に交換するには、ある程度の技術は必要と言えます。しかし、特別なことではなく、数をこなすうちに自然に身につく技術です。最初は時間だけがかかり、全然うまくできないこともあります。ですが、いつの間にか普通にこなせるようになっていきます。技術的な心配は特に必要ないと思います。

施設では…
施設で働く以上、利用者の便失禁や、利用者が便をいじってしまう弄便行為などは、避けられないです。弄便などは、こちらの対応次第でやめさせられる、なんて簡単に言う人もいますが、なかなか難しいものです。
便の片づけは、慣れはしても、楽しい作業ではないです。できればやりたくはないです。なので、中にはなんとかして人に押し付けようとする職員もいます。勉強だの慣れるためだのとそれっぽいことを言われたり、特に理由もなしに押し付けられている新人職員をちょこちょこ見かけたりします。

肉体労働への不安

夜勤
施設で勤務、それも正職員でとなると、夜勤は避けて通れない道となります。夜勤は夕方17時前後に出勤し、翌朝10時前後に退勤といったところがほとんどです。時間にして2勤務分働くわけです。夜通し働くことへの体力的な不安があるのではないでしょうか。 実際みんな初日は心配そうにしてます。ですが、若い職員も年配の職員も、普通にこなしていきます。本人の体質もあるのでなんとも言えませんが、どちらかというと若い人のほうが眠そうです。

夜中はほとんどの利用者が寝ているので、職員数こそ少ないものの、夜勤は日勤帯よりも仕事自体は楽なことが多いです。ですが、どうしても体調は気を付けないと崩しやすくなります。正社員以外でよいなら、夜勤をやらないという選択肢はあります。そうしている主婦の方はたくさんいますね。夜勤は嫌だけど正社員にこだわるというなら、[デイサービス]という選択肢もあります。

体力の心配
一番力を使うのは、移乗(車いすからベッドや、トイレから車いすへ移ったりすること)の際です。移乗の介助は、利用者が一人で移乗するのを危険がないよう見守ることから、寝たきりでまったく体を動かせない利用者を抱えて車いすへ移すものまで、色々あります。力が入らない利用者の移乗介助は、それなりに筋力をつかいます。 ですが、筋力よりコツやそれぞれの利用者の特徴をつかむことのほうが重要です。体格の小さい女性職員が一人でひょいっと抱きかかえられる利用者を、がたいのいい新人男性職員が持ち上げられないなんてこともあります。コツをつかむことでそれくらい変わってきます。

ただ、一人で利用者を持ち上げるような場面はほとんどないはずです。利用者を抱きかかえて持ち上げなければならない時は、必ず二人以上の職員で行うことがルール化されていたり、そもそも持ち上げないで済むような道具を使用したりします。
移乗以外で力を必要とする介助はほぼないですが、移乗は他の多くの介助にからんできます。

若いときに引っ越しや工事現場、農家の手伝いなどのアルバイトをしたことがありますが、ある程度年を重ねてからした介護のほうが、比較にならないほど体力的には楽でした。還暦をこえた職員(男性も女性も)と一緒に働いたことがありますが、特に問題なくフルに働けていました。私のように介護の仕事をする前の数年間が完全にデスクワークだった場合は、最初は筋肉痛や疲労感に襲われるでしょうが、土木作業のようなきつさはないです。始めてから1年くらいまではやせていきましたが、健康的な体重を保ったところで維持されています。

将来的な不安

給料面
介護というと、安い給料の仕事の代名詞のようなイメージがあるのではないでしょうか。実際、安いですしね。私は1年目で年収300万に届かないくらい、数年後に役職がついて、やっと360万くらいでした。少ないながらも、毎年確実に昇給していっています。特に節約もせずに(贅沢もしない人間ですが)生活していけてます。皆、普通に妻子を養っているようです。

現在は処遇改善加算といって、介護職員の給料を増やすための仕組みも取られています。団塊の世代の人たちが介護の必要な年齢に達しはじめている今、介護業界の人手不足は必至でしょうから、人材確保のために待遇がよくなっていく可能性も考えられます。劇的に変わることは期待できませんが。

年をとったら
年をとったら働けなくなるのでは、と思っている人もいるのではないでしょうか。私の知り合いは還暦を越えても特養で普通に働いていましたが、特養より体力的に楽な介護の職場もあります。大きな法人でしたら、特養以外の施設などを持っていることも多いので、異動できるかもしれません。介護はとても応用がきく仕事なので、経験豊富な人なら転職も難しくないです。

一生現場で働くだけが介護の道ではないです。のし上がったり資格をとったりして、管理職や介護支援専門員(ケアマネージャー)って道もあります。不況にも強い業種です。